小学生
2020.10.20
2020年度主要私立中学入試の動向まとめ~福岡編~
2019年度の入試では、福岡市の学童数の増加と2020年度の教育改革を見越して(中高一貫校の方が改革に適切に対応できそうだという予測から)、200名ほど受験生が増加しましたが、2020年度の私立中学入試の状況は、昨年より少し落ち着いた印象です。以下に概況をまとめていますので、受験者の動向などを確認ながら、志望校選択の参考にしてください。
【2020年度中学受験生の推移】
西南学院中 | 福大大濠中 | 上智福岡中 | 筑紫女学園中 | 東福岡自彊館中 | 中村学園女子 | |
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2020年度受験者数 | 1,181名 | 1,086名 | 844名 | 511名 | 377名 | 156名 |
2019年度受験者数 | 1,242名 | 1,215名 | 841名 | 587名 | 358名 | 172名 |
増減 | -61名 | -129名 | +3名 | -76名 | +19名 | -16名 |
2020年度倍率 | 7.38倍 | 6.79倍 | 5.28倍 | 3.65倍 | 4.71倍 | 3.90倍 |
基準偏差値 | 男子53女子55 | 男子55女子56 | 男子47女子50 | 42 | 40 | 40 |
合格点の男女差が拡大。女子受験生は要注意!!
福岡市の学童数が増加した一方で、私立中学の受験者数は全体で100名程度の前年比減となりました。男子受験生は微増だったことから、女子受験生が大幅に減ったと考えられます。しかし、共学校の男女間の得点差は相変わらず女子の方が高く、上智福岡中では男女で20点もの得点差があります。女子受験生はじゅうぶんに注意して臨まなければなりません。
“大濠か西南”から“大濠と上智、西南と上智”へ
福岡市内のトップ私立中学と呼ばれる福大大濠中、西南学院中の受験生総数は、2019年度入試では両校とも200名以上増加し1,200名を超えました。しかし今年度は、福大大濠中が約130名、西南学院中が約60名減少しています。ただし、合格ラインは2019年度入試とほぼ変わっておらず、両校とも確実に合格するためには首都圏模試の偏差55以上が必要となりますので、福大大濠中、西南学院中を志望する場合は遅くとも5年生から受験対策を行うようにしてください。
一方、上智福岡中は、前述の2校が受験者数を減らしたのにもかかわらず、昨年とほぼ同数の受験者数を確保しました。これは今まで大濠か西南かを選択していた受験生が、上智福岡中を選択肢に加え、上智と大濠、または上智と西南といった選択をする傾向が強くなってきたことを意味しています。上智福岡中の合格ラインを見ると、ここでも女子は昨年より合格点が上がっていますのでご注意ください。
女子校では筑紫女学園が今年度から定員を減らした影響で、少し難化しています。その他の中学では特筆すべき合格ラインの変化は見られませんでした。総じて、女子の受験生にとっては注意が必要な状況です。動向をしっかりと確認しながら、受験対策を進めましょう。
早稲田佐賀は競争激化!公立一貫校人気は一服
福岡からの受験者も多い早稲田佐賀中は、2019年度入試で300名受験生が増加しましたが、2020年度入試では受験者数がさらに150名ほど増え、倍率は12.86倍にまで上がりました。これは福岡以外の県からの受験が増えたためと思われます。福岡以外の県からの受験者は今後も増えることが予想されますので、志望する生徒はじゅうぶんご注意ください。
また、公立中高一貫校は2018年度入試までは増加の一途を辿っていましたが、一時期の人気は落ち着いてきたように見受けられます。しかしこれから本格化する教育改革に対応しやすい環境なので、今後また受験者が増加に転じる可能性もじゅうぶんに考えられます。受験を考える場合は他の受験者の動向や傾向にも注目し、しっかりと対策をするようにしてください。
新しい入試傾向に注目!
2020年度入試の出題傾向の中で特筆すべきは、中村学園女子中と福岡雙葉中でしょう。この2校の入試では、従来の知識型の問題と違って、思考力や判断力を問うPISA*型の問題が出題されました。今後はこのような思考力・判断力・表現力を問う問題の出題が増えると予想されますので、直近の過去問を解くなど、しっかりと対策をしましょう。
*PISA(Programme for International Student Assessment)とは、どれだけ知識を覚えたかではなく、覚えた知識を使って実生活の中でどれだけ活用することができるかを問う、OECD(経済協力開発機構)の国際学習到達度調査です。学校のカリキュラムに関係なく、学んだ知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測ります。
北九州は小倉高進学を意識した中学校選びも
北九州地区の2020年度入試は、2019年度と大きな変化は見られませんでした。照曜館中学校の通常のコースは首都圏模試の偏差値40から45程度ですが、プレミアクラスでは50が必要。明治学園の合格ラインも偏差値50で変わらずです。今後も各中学校の入試問題の難易度だけでなく、受験者数の動向や入学後のカリキュラム・高校から大学受験までの学習内容を確認をした上で志望校を選びましょう。
中高一貫ではない小倉日新館中は、国立の福教大附属小倉中との併願者が多く、優秀生の受験者が増加傾向です。近年の小倉高校への合格実績増加の影響もあり、人気が上昇しています。入試問題は難しくないのですが、ここ数年合格ラインは高め(目標得点率75%)なので、対策は遅くとも小5からは開始したいところです。
県立中高一貫校である門司学園中学校は、面接と適性検査で合否決定されますので、通常の学習以外に思考力を問う問題などを積極的に解き、柔軟な考え方を身につけておくことが重要です。「適性検査」や、表現力が求められる「面接」でアピールできるよう、通常の教科の勉強とは別にしっかりと対策を行いましょう。
県立で中高一貫校というのは魅力的ですが、その分ハードルも高いので、安易に入試そのものを目標とするのはおすすめできません。中学入試全般に言えることですが、高校受験のように全員が受験をする訳ではない中学受験というイベントを通して、お子さまがどれだけ成長できるかを第一目標に設定しましょう。
筑後地区では八女学院が受験者増!
筑後地区の2020年度の中学入試は、2019年度とほぼ変わらない受験者数でしたが、八女学院中は専願制度を導入し、40名ほど増加しました。共学になった信愛中学校は、昨年度は一時的に増加しましたが、今年度は変化がありませんでした。
八女学院は昨年受験者が減少しましたが、今年度、専願制度を導入したことで2018年度の受験者数にまで回復しました。合格ラインは他の中学よりも高くなっています。国立の福教大附属久留米中以外は、教科書準拠の問題集を小6内容まできちんと解けるようにしておくことが合格の前提ですが、八女学院はそれを小6の1学期までに完了し、その後は他の中学校の入試問題も含め、過去問を解くなど、ある程度演習量を確保するようにしてください。
中学受験にもいよいよ英語が追加!?
教育改革により、2020年度の4月から5、6年生の英語が正式科目となりました。今後、私立中学でも受験科目に英語を採用する学校が増えてくることが予想されます。現在すでに受験科目に英語を設けている中学校の入試問題を見てみると、レベルとしては英検®3級程度となっています。早めに英検®を受験しておくことで、中学受験に備えることができそうです。尚、受験科目として英語を選択できる学校は2020年10月末現在、福岡女学院中、福岡雙葉中、東明館中、沖学園中、リンデンホール中、西南女学院中の6校があります。
九州7県には2019年5月1日時点で私立中が計80校あります。福岡27校、佐賀6校、長崎15校、熊本9校、大分4校、宮崎9校、鹿児島10校。国立中は9校で、福岡3校、他の6県は各1校です。生徒数は国公私立中で計34万6000人。このうち4.8%が私立中、1.1%が国立中に在籍しています。(出典:文部科学省 2019年学校基本調査結果)